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  Le Vin Nature フランス自然派ワインニュース  (8/6 2007)
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二酸化硫黄:隠された情報

法律は現在、ワインのラベルに、ワインの中には二酸化硫黄が入っていることを
表示するように強制している。しかしながら、その量を明確にすること無しにだ!
これは全てを変える。なぜなら、上手に二酸化硫黄を扱えば、時には下手に取り
扱われた二酸化硫黄無しのワインよりも良いことがあるからだ。


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“Contient des sulfites”(二酸化硫黄含む)という表示は、2005年度に生産された
最初のワインのラベルから出現した。二酸化硫黄の存在を知らせるこの表示は、
アルコール飲料のアレルギーに関する情報開示義務付けているEUの法律に由来する。
これまで、ブドウ栽培・ワイン醸造家の圧力団体は、全ての食品に強制されている
情報開示義務に反発してきた。多くのブドウ栽培・ワイン醸造家がブドウ果汁に加える
長い添加物リストの開示を免れてきた。たとえば、補糖、補酸、酵母、オークチップ等だ。
これらの情報を知ることで、消費者は確かに満足するだろう。


しかしながら、この情報開示方法(Contient des sulfites)では、なんの意味も無い。
なぜならワインにとって二酸化硫黄は最善の選択であり、また最悪の選択であるからだ:
全ては量の問題だ。法律では10ミリグラム/リットル以上の二酸化硫黄の存在から、
ラベルに表示されなければならない。これはとても少ない含有量だ。ヨーロッパで
認可されている最大含有量は赤ワインで160ミリグラム/リットル、白ワインと
ロゼワインで210ミリグラム/リットル、そして甘口ワインで400ミリグラム/リットルだ・・・


(EU, Vin Bio, N&P, Demeterで認められている異なった認可量は→
こちら

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また、以下のことを知ることも重要だ:一つは、二酸化硫黄は少量だがブドウの房に
自然に存在していることがあるし、もう一つは二酸化硫黄の存在量が最小限のとき、
測定器は重要なエラーをするかもしれないということだ。10ミリグラム以下の含有量
では測定器はプラス・マイナス5ミリグラムの範囲でエラーが起こる。よって、
もしかしたらワインは全く二酸化硫黄を含んでいないかもしれないが、
“contient des sulfites”という表示は記載しなければならない!


よって消費者は、興味のあるその情報を持っていない: 厳格で才能豊かな醸造家が
作った、感知できない量である15ミリグラム/リットルの二酸化硫黄を含んだワイン
でも、いい加減な醸造家が作るその10倍含んだワインでもラベル上は同じことだ!


二酸化硫黄で大事な点は、その存在ではなくその含有量である。酸化防止性、防腐性、
そして酸性化性などの効果がある二酸化硫黄は、19世紀末にパストゥールが理解して
いたように、ワインの香りを風化させる酸化からワインを守る。ワインを保存するために、
ギリシャ人とローマ人は、ある成果を伴って、松脂と海水を用いていた。ヨーロッパで
二酸化硫黄の使用が広まっていったのはわずか15世紀からのことだ。毎度の事ながら、
その簡易性と安逸さから、進歩は乱用をまねいた。腐敗したブドウも一緒に収穫、
手っ取り早い醸造、または下手な使用方法。二酸化硫黄を<大量投入>して、あとは
何もしなくて十分なのだ!

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赤ワインはタニンの存在により酸化に対して抵抗力が強いが、白ワインとロゼワイン、
甘口ワインの醸造はより複雑で、より多くの二酸化硫黄の投入を受ける。その影響は、
鼻にマッチをすった後の悪臭が<突き刺さる>だけでなく、脳の血管の膨張から頭痛を
引き起こし、たくさんの人々が白ワインやロゼワインを飲めないと信じさせる原因と
なっている。


“Contient des sulfites”という表示が、したがって消費者を啓蒙しないのだから、
結果としてこの枠に入らないワイン(sans soufre−二酸化硫黄無し)のカテゴリーを
より目立たせている。これらのワインは、理論的にはラベル上に
“Ne contient pas de SO2 ajoute”(添加された二酸化硫黄は含まれていない)と記載できる。
しかしながら、前述したように、分析値のエラーを考慮すれば、それは常に可能なことではない。
従って、現実には醸造家は“contient des sulfites” (1)という表示を残すことを好む。


したがって二酸化硫黄の問題は確かに複雑だが、 ≪Bio≫ や ≪Biodynamique≫というラベルが、
既に法律よりも2分の一から3分の一の投入量を認可しているにも関わらず、含有量に帰着する
わけでもない。


醸造上の危険を保証するため、二酸化硫黄は醸造過程中、全ての段階で使用される可能性がある:
痛んだブドウを守るため、プレスの間、発酵中、熟成中と瓶詰め時。最悪の
ブドウ栽培家・ワイン醸造家は、全ての行程において使用する。良い醸造家は、ワインに
繊細さと独自性を与える自然酵母を殺さないために、慎重さを要求される状況と発酵中の
大部分では二酸化硫黄の投入を禁止している。瓶詰め時に、ワインの安定性を保つために軽く
二酸化硫黄を投入することは悪いことではない。


幾人かの醸造家は、二酸化硫黄を使わないように努めている。これは冒険家達の小さな世界であり、
したがってそのワインは論戦と解説を引き起こす。見事なものは、比較できないほどの感動を
引き起こすのは否定できない。なぜなら、それらのワインは、すばらしい芳香と純粋さ、
上質さに達する。そして、醸造家は同じワインを二酸化硫黄入りと二酸化硫黄無しで瓶詰めする
ことも可能だ。(ボジョレーのマルセル・ラピエールがモルゴンで1.無濾過・二酸化硫黄無し、
2.無濾過・二酸化硫黄入り、3.濾過、と3種類のワインを作っているように。)

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しかしながら、これらの二酸化硫黄無しの極端なワインは、新鮮で、生命力のある、脆い生産物で
ある。低温での取り扱いが欠かせない:常時15度以下に保存されなければならない。数ヶ月間、
閉じていることもある。そして開けると、二酸化炭素ガスの存在が、知識の無い消費者を混乱
させることもある。これらのワインは、取り扱い方を知らなければならない特別な本当の生産品で
ある。大型流通業では見つけることができないこれらのワインは、キャビスとビストロのワインで
あるが、星付きレストランにも登場していることでどんどん話題に上ってきている。


しかし、あまりにも多くの醸造家が、不注意にも二酸化硫黄無しのワイン生産に乗り出している。
忘れがたい奇跡的なワインの脇に、どれだけ問題があり、色あせて、酸化したワインがあることか。
二酸化硫黄無しの目的は果実味とテロワールの純粋さを保つことであるのに!失望を経験した後、
二酸化硫黄無しワインを支持する生産者は、理解し学ばなければならないことがある事を発見する。
したがって、たくさん人がジュラ地方のピュピランにある、異論の無いこの分野の教祖である
ピエール・オヴェルノアの元へ巡礼する:この謙虚な偉人は、過去数十年間、二酸化硫黄無しの
豪華で近寄りがたいアルボアを醸造している。彼のワインは何の問題もなく熟成する。彼は、
二酸化硫黄無しのワインを説明しながら、修道士の温和さをもって巡礼者の意気込みに水をさす:
「数十年間耕されたブドウ畑は、地中深く根が伸び、これがミネラルを与えます。このワインの
自然な保護者を、化学肥料は滅ぼします。収穫が正常で清潔、選果をしっかりし、酵母が生命力
溢れているとき、ワインは必要なときに、自然な二酸化硫黄を発散します・・・」


簡潔に言えば、二酸化硫黄無しのワインとは、醸造家にとっても消費者にとっても、それは始まり
ではなく、結果だ。

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(1) 以下に、弊社が扱っている幾つかのワインの二酸化硫黄の含有量を記載します。

Chateau Planquette, Medoc, 2005
合計二酸化硫黄:5ミリグラム/リットル(誤差可能性:5.1ミリグラム)

Domaine Ducroux, Regnie, 2006
合計二酸化硫黄: 15ミリグラム/リットル (誤差可能性:18 ミリグラム)

Champagne Andre Beaufort, Champagne Brut, 1999
合計二酸化硫黄: 38ミリグラム/リットル (誤差可能性:不明)

Domaine P. Overnoy - E. Houillon, Chardonnay 2004
合計二酸化硫黄: 13 ミリグラム/リットル(誤差可能性:不明)

Domaine P. Overnoy - E. Houillon, Ploussard 2003
合計二酸化硫黄:29 ミリグラム/リットル(誤差可能性:不明)

Domaine P. Overnoy - E. Houillon, Vin Jaune 1989
合計二酸化硫黄: 17ミリグラム/リットル(誤差可能性:不明)

Domaine Folle Avoine, VdP d’Oc, 2006
合計二酸化硫黄: 19ミリグラム/リットル (誤差可能性:不明)

この数値から見ると、大半は二酸化硫黄を添加していないにもかかわらず、
≪ ne contient pas de sulfites ≫(二酸化硫黄を含んでいない)という表示をする
ことは不可能だ。


≪ sans soufres ≫(二酸化硫黄無し)というワインの流行と消費者の正当な心配の恩恵を受け、
温度コントロール無しの商品台には≪ sans soufres ≫という表示されたワインが高くしっかり
掲げている。これは口に出しいくい醸造方法に関する情報をうまく隠しているが、
消費者にとってはより危険なことかもしれない。