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  Le Vin Nature フランス自然派ワインニュース  (10/9 2007)
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[ブドウ栽培・ワイン醸造]
Soufre もしくはSo2(二酸化硫黄)に関する考察:


有機ワイン、または自然派ワインのカテゴリーにおいて、二酸化硫黄は栽培と醸造現場で
使われることもあれば使われないこともある。SO2は、その殺菌力と酸化防止力により、
数多くの食品調理剤(E220からE228まで)に使われる。ワインをとってみると、熟成中の
発酵したブドウ果汁は、直接酸素と関係を持つ。ここで二酸化硫黄の使用について問題が
生じる:二酸化硫黄を使うか、使わないか?使うとしたら、どの程度か?


二酸化硫黄は、ミネラル物質であり、植物の成長において最も大事な役割を担っている。
(例えば、ある種のたんぱく質や酵素の形成や葉緑素の生産など)ブドウの中にもほんの
少しの量が存在する。さらに、ブドウ果汁の発酵過程において、酵母はほんの少量の
二酸化硫黄を生成する。しかし、問題となる二酸化硫黄は、醸造中に様々な形で添加される
ものや−anhydride sulfureuxやカリウムbisulfiteなど−、ある状況では吐き気を
催すH2 SOや強烈なH2SO3 や H2SO4である。

ある部分の二酸化硫黄は、ワインの中では他の物質と結合して存在している:
ワインのバランスやPH値にもよるが、たいだい二酸化硫黄の3分の2は、ワインの様々な
成分と結合しているわけである。そして、自由SO2(SO2libre)だけが、保護物質としての
役割を果たす(自由SO2だけが酸素と結合して酸化を防ぐ働きをする)。よって、活動的な
保護物質として働くこの自由SO2は、規則に沿ってワインに添加される合計SO2の小さい
一部分だけを占めている。そして、この自由SO2が、香りや味覚として認知できる。


純粋で自然で飲みやすいワインを目標に、数多くのブドウ栽培家・ワイン醸造家が今日、
醸造における添加量の削減や無添加について考察したり検討したりしている(瓶詰め時に
おける二酸化硫黄の添加はまた別の問題である)。これは、耕作や醸造方法に非常に厳しい
選択を迫る。ブドウの木々の健全性、収穫時と選別時の衛生状況、そして発酵時の間違いの
ない制御などだ。


一般的には、二酸化硫黄が「醸造において欠かせないものではない」という考え方に達する
醸造家は、厳格で有機栽培やビオディナミを栽培に取り入れている醸造家だ。彼らは、
ブドウの木々と果実に最も近く、様々な添加物からもっとも離れたところで、テロワールの
性格で本当の表現を研究し推奨してきたジュール・ショーブ氏の後継者たちだ。
ステファン・ドゥルノンクール氏やクロード・ブルギニョン氏など収穫時のブドウの質と
熟度を優先する人々も、節度あるSO2の使用を力説する。

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歴史

型にはまったワインへのSO2の添加は、フランス人による北アフリカのブドウ畑の開発の
時代に遡る。酵母によるブドウの糖分のアルコールへの変換の際には、熱を発散する。
40度を超えると、酵母は活動しなくなり死んでしまうことがある。そして、バクテリアが
後を引き継ぎ、アルコールではなく乳酸や酢酸を生成する。


北アフリカでは、全ての状況が、この40度という温度に達するように満たされていた:
収穫時の気候、ブドウ果汁内の豊富な糖分等…ブドウ栽培家・ワイン醸造家と第一世代の
醸造コンサルタントは、偶然に、大量のSO2を発酵前の収穫時にブドウに添加すれば、
酵母の活動はとてもゆっくりとしたものになり、バクテリアは活動しないことを発見した。
したがって、もし酵母がゆっくり活動するなら、熱の発散はより長期にわたることになり、
自然な蒸発や冷却により、熱を制御することができる、と考えた。そして、暑い国々での
保管とフランスへの輸送は、ワインにとってSO2を不可欠なものとした。こうして
醸造コンサルタントが出現し、ワインと共に海を渡った。

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栽培

二酸化硫黄は、ベト病などの菌類に対する抗カビの能力のために使われているが、
またうどん粉病に対する有効性も良く知られている。石油製品の副産物の形態がもっとも
良く使われているが、鉱物から抽出した鉱物質形状の物も存在する。火山から抽出する
二酸化硫黄の質の良さは定着しているが、今日ではその採集に関わる人的と公的な面での
弊害から利用は禁止されている。量は、粉末上のもので1ヘクタール辺り20から30キログラム、
水に薄めたもので、1ヘクタール辺り12キログラムである。

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醸造

二酸化硫黄は、19世紀から使われている食物の保存剤である。今日、大抵の缶詰や瓶詰などの
保存食に使われている。極端な環境下でのワインの輸送を可能にしたのは、二酸化硫黄のこの
性質である。二酸化硫黄の健康に対する影響は証明されている。多量の摂取は、ビタミンBの
同化作用に関してネガティブな働きがあり、特に脳神経細胞(ニューロン)を維持する
ビタミンB1に影響がある。SO2を過度に含んだワインを摂取すると、頭痛やつらい目覚め、
胃痛などを引き起こす。なぜなら、SO2は消化に関する機能を攻撃するからである。
世界保健機関(WHO)は、人体へダメージの無い日常の最大摂取量は30ミリグラム/1日で
あると考えている。


注意しなければならないのは、樽を殺菌するために用いられる二酸化硫黄は、ワインの中では
ほとんど発見されないということだ。対照的に、不安定なワインを保存する目的で用いられる
二酸化硫黄はワインの中で発見される。


過度な量の結合していない二酸化硫黄、つまり自由な二酸化硫黄は、頭痛や異常な匂いなどを
引き起こすものである。マックス・レグリズ氏によれば「(二酸化硫黄は)接触し浸透して影響を
受けた各器官の粘膜にとっては非常に厳しい腐食剤だ」という。


私達が数多くの製品の中に含まれている二酸化硫黄は、既に定期的に摂取している高い確率があり、
またワインの中に許可されている合成保存剤であることは知れられているので、(有機ワインと
ビオディナミワインにとっては、制限された容量で許されている唯一の保存剤でもある)従って、
許容量を超えなければ、不要のものではない…。慣習的な甘口ワインのSO2の認可容量は
400ミリグラム/リットルであるので、これらのワインを100ミリリットルを飲めば既に人体に
影響がないと考えられている最大摂取量を超えてしまう。だから、脳神経細胞に
注意しなければならない!


また、含有量は少ないが、ほんの少し甘口のロゼや白ワインも気をつけなければならない。実際、
タンニン分など自然の保存成分が少ない白やロゼワインや、再発酵が始まる恐れのある糖分を多量に
含んだワインは、頻繁に人工的な安定剤を使う必要がある。幸運にも注意深い最近の
有機栽培家・ワイン醸造家の傾向は、保存剤の寄与を制限できるように熟したブドウを収穫することを
目指していることだ。また物理的な技術を用いることもある。例えば収穫からワインを安定化させるため
冷却技術を用いるなどである。


収穫時のブドウの質に確信を持っているブドウ栽培家・ワイン醸造家は、ある場合においては、
醸造時に二酸化硫黄を使わないこともある。しかしながら、例え有機栽培のブドウ栽培家・ワイン醸造家に、
何時でも完全に二酸化硫黄を使わないように要求することは不可能だ。それは、彼らに自殺的な危険性を
取らせることになるだろう。


現実には、二酸化硫黄の使用(もしくは未使用は)は、そのヴィンテージの容易さ、もしくは
難しさによる。しかしながら、もしワインが二酸化硫黄を添加すること無しに醸造されたときは、
その危険を取った価値があると言って良いだろう、なぜなら、それらのワインはとても純粋で
飲みやすいからだ。


そうであるから、傾向としては、添加量を様々な方法で減らすようになっているのである。そのため、
幾つかの条件が研究されている:熟度の研究、成分の熟度のバランスの取れたブドウを収穫するために
区画ごとやブドウの種類による熟度の違いの研究、収穫時における厳しい選別(もちろん手摘みにおける)、
酒蔵や道具の衛生状況の尊重、最後に澱上での発酵と熟成の制御… ワインへのたゆまぬ監視は不変に続く。


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